過酸化水素って何?どうやって製造するの?何に使われるの?関係する法律は?
過酸化水素って何?
過酸化水素(かさんかすいそ)は、化学式H₂O₂で表される化合物です。一般に「オキシドール」という日本薬局方名で知られています。この物質は強力な酸化剤および漂白剤として利用されており、多くの用途があります。水によく溶け、その水溶液を過酸化水素水と言います。
どうやって製造するの?
工業的な過酸化水素の製造は、アントラキノン類を反応媒体とする方法でアントラキノン法と呼ばれています。アントラキノン法では、アントラキノン類を触媒の存在下で水素により還元する還元工程、生成したアントラヒドロキノン類を酸化してアントラキノン類に再度転化し、同時に過酸化水素を生成させる酸化工程、生成した過酸化水素を水で抽出する抽出工程から構成されます。アルキル置換基を持つアントラキノンやテトラヒドロアントラキノンを有機溶媒に溶解した溶液を作動溶液と呼びます。抽出後の作動溶液は、再び還元工程に戻され、再利用されます。これらの多段階の工程が必要なことから過酸化水素の価格は高くなってしまいます。弊社では韓国及びタイで製造された過酸化水素水の取り扱いがございます。
何に使われるの?
製紙の際のパルプ漂白や排水処理、半導体の洗浄など、工業的な利用が大部分を占めます。最終的には無害な水と酸素に分解するため、工業利用するには環境にやさしい物質であると言われております。
漂白剤、酸化剤、消毒・殺菌剤などの他、濃度が濃いものは液体ロケット燃料にも使用されています。
漂白:紙・パルプ、繊維、衣料、農林水産物などの漂白(特にコピー用紙など製紙業界における漂白では重要なポジション)。医療用漂白剤としても使用されており、液体の医療用酸素系漂白剤は、過酸化水素を希薄した溶液です。
酸化剤:有機過酸化物、エポキシ系可塑剤、ポリアミドなどの化学品、冶金分野・製錬工程における金属の酸化剤として活用。EVバッテリー正極材の一つである硫酸ニッケルの製造時にも使用されています。
脱臭:下水処理場やごみ処理場など、硫化水素などの悪臭物質提言に有効活用されています。
腐食防止:配管材料を腐食させる硫化水素などの物質を低減するため、下水処理場、温泉廃水関係腐食防止剤として使用されています。
殺菌:高化学的酸化処理により高度な殺菌効果を発揮。食品製造に使用される機械の洗浄や容器の殺菌、病院内での院内感染防止等に利用することが出来ます。2.5~3.5 w/v%の過酸化水素は医療用の外用消毒剤としても利用され、オキシドールという日本薬局方名でも呼ばれています。
表面処理;物質表面の汚れを分解・洗浄できるため、プリント配線基板のソフトエッチングなどに活用されています。
関係する法律は?
過酸化水素は不安定で酸素を放出しやすく、強力な酸化力があるため、取り扱いを誤ると危険な物質です。以下に日本での適用法令を記載します。
- 労働安全衛生法:危険物・酸化性の物(名称等を表示すべき危険物及び有害物)
- 毒物及び劇物取締法:劇物
- 水質汚濁防止法:指定物質
- 海洋汚染防止法;有害液体物質
- 船舶安全法:酸化性物質類:酸化性物質 分類5 区分1
- 航空法:酸化性物質類・酸化性物質 分類5 区分1
- 道路法:車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)
- 労働基準法:疾病化学物質
- 消防法:第6類酸化性液体、過酸化水素
取扱にあたってはSDS(安全データシート)の事前確認、配送にあたってはイエローカードを発行し携帯することで、何か事故等が起きた時に迅速に対応できるようにしておくことが重要です。